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タイポさんぽ(学芸大学〜武蔵小山)

今年の2月、旅行で群馬県の下仁田町(しもにたまち)に立ち寄った際、街角を賑わす味わい深いタイポグラフィに魅了されました。それ以来、外を歩く時はつい看板に目が留まるようになりました。

タイポグラフィ(タイポ)」とは、街中の看板やポスターなどにあしらわれているデザインされた文字のこと。「タイポさんぽ」とは、お散歩しながら街中のタイポグラフィを味わうこと。

日本語には平仮名、カタカナ、漢字があり、そこにアルファベットやアラビア文字なんかも加わって、日本の街角タイポは実に賑やかです。悪く言えば不揃い。しかしこの混沌とした景観が“タイポさんぽ”の楽しみそのものなのだとも思うのです。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、最近はあまりタイポさんぽに出かけることができていませんが、以前撮りためたものを少しずつアップしてみようと思います。まずは、学芸大学駅〜武蔵小山駅間をお散歩した時に見つけたものから。どれも味わい深く、ずっと眺めていられるタイポたちです。

今回のお散歩コース

学芸大学駅から武蔵小山駅へ向かうルートは、ほぼ一本道。私は途中ちょっと路地に入ったり回り道をしたりして、40分くらいかけてお散歩しました。

タイポさんぽ(学芸大学〜武蔵小山編)

もちろん、この他にもたくさん魅力的なタイポがあるかと思うのですが、とりあえず私が写真におさめたものを掲載します。

学大に吹く南国の風

学芸大学駅東口目の前にある青果店「ボラボラ」。ボラボラというのは、南太平洋にある小さな島の名前なのだそうです。こう見えて創業50年以上の老舗の八百屋さん。

注目したいのはなんと言っても「ボ」の濁点。横棒の右サイドを大胆に削って濁点をあしらうことで、とてもバランスの取れたタイポになっています。濁点どうしは合体して、まるで横になった達磨のよう。角丸と直角が上手に共存しているのもいいですね。トレードマークのヤシの木との相性も抜群です。

グルーヴ風な「電」の文字

年季の入ったレトロなタイポ。まるでデッキのような真っ白い木製の壁面に赤い文字がとても映えます。真ん中の「ダ」の色が剥げていますが、それすら味わい深いという不思議。しかしそれ以外の白地は明らかに「ダ」の剥げた白とは質が違います。「電」の赤白境目ラインは下の「甲」部分の斜めラインにつながっているように見えるので、やっぱりあえてのツートンなのでしょう。

この「電」、どこかで見たことあるなと思っていたのですが、「電気グルーヴ」の「電」と同じだと気付きました。調べてみると、「ナショ文字」という書体なのだそうです。Wikipediaによると「ナショ文字は、1937年から1987年まで松下電器産業のブランド「ナショナル」のロゴ及び展開する商品名やサービスにおいて広く使われていた書体である。「ナショナル体」と呼ばれることもある。 」ひとつ勉強になりました。

味わい深い量産型

「エスロン雨とい」という商品のPR看板です。こちらはおそらく量産された看板なのでしょう。しかし、ここ以外では見かけたことがありません。青と赤と白というトリコロールカラーが、なんともお洒落ではありませんか。少し縦長のコロンとした長方形も素敵です。カタカナと平仮名、漢字という、キャスト総出の組み合わせですが、まとまりがあって落ち着く風体です。

青空に映える赤い文字

目黒通りに抜けたところで視界に入る「目黒印房」の文字。「印房(いんぼう)」とはハンコ屋さんのことなのだそうです。昨今、ビジネスシーンでは何かと批判的な目を向けられがちなハンコですが、私はハンコそのものは大好きです。タイポグラフィの原点とも言える、大切な存在だと思っています。

「黒」の文字の下半身がイカの足を連想させる、お洒落なタイポです。縦書きにとてもよくマッチしていますね。「房」の文字の左側の払いが少し跳ねているのもキュート。愛情込めて育てられた文字たちなのかしら、なんて。

振り返れば奴がいる(いた)

目黒郵便局の交差点で学大方向に振り返ると、なんともレトロで印象的な看板 が目に入ります。婦人服製造の会社の看板なのですが、残念ながらこちらの会社は倒産してしまっているようです。また、最近になってこちらの看板も外されてしまいました。この看板、大好きだったのでとてもショックです。

昭和を感じさせる女性のイラストに、長体の「レマン」の文字。レマンとは「恋人、愛人」の意味。サーモンピンクの色合いが昭和レトロを演出しています。建物のレンガ壁とのコラボレーションもお洒落です。ああ、本当にもったいない…。

有名サイクルブランドの「K」

目黒通りから武蔵小山方面に入ってすぐのところにある自転車工房。お店の名前は九十九サイクルスポーツ。Kalavinka(カラビンカ)というのは、ここのフレームブランドです。漢字で書くと迦陵頻迦、上半身が人で、下半身が鳥という、仏教における想像上の生物なのだとか。小さな工房ですが、こちらのブランドには世界中にファンがいるとのこと。

注目したいのはやっぱり「K」。大文字のKは小文字のkの右側が上下にニョキっと伸びたデザインです。イニシャルのKは下に突き抜けていますが、それがまたお洒落。自転車やレンチなどのアイコンも絶妙にレイアウトされています。ホイールの中に書かれているのは「江戸鷹」。調べると、山口健治さんという競輪選手の異名なのだとか。お店と何か関係があるのでしょうか(自転車については素人で…)。

ちなみに、お店の奥に回り込むとこんな看板もかかっています。

これぞ競輪という勢いのあるイラスト、黒背景と赤文字のコントラスト。手作り感のある、大学の立て看板のような風合いも素敵です。

礼儀正しい足長の「A」

「株式会社日経ライフ不動産日本ステンドグラスアートギャラリー」という店舗のようですが、営業しているのかどうかは確認できず。しかしこのアルファベットの絶妙なタイポグラフィは非常にグッときます。最も好きなのは「A」。足長でスマートなジェントルマンを連想します。特にイニシャルの「A」は、右足と右腕を前に出してお辞儀をしているようにも見えませんか?今まで見たことのある「A」の中で最も礼儀正しい「A」です。

ちなみに、そのお隣に掲げられているこちらの看板も味わい深い。

「日」の文字の左肩がなで肩になっているのがいいですね。「ライフ」のそれぞれの文字の払い部分にアンカーポイントが多めにあしらわれてカクカクしているのも好きです。

住宅街に溶け込むネオン

タイポグラフィそものもというよりも、この看板文字と壁面デザインとの調和が美しいお店です。アーチ型にくり抜かれたモルタル製の壁に、妖しいピンク色のネオンが艶を与えています。コスモス感出てますよね。昼間は電気が消えているので、夜眺めるのがオススメ。

ちなみに、ご覧の通りカレーのメニューがとても充実しているお店のようです。スナックに女一人で入るのは…と尻込みしてしまいますが、いつか食べてみたいと思っています。

軽快な口笛が聞こえてきそうな雀荘

ラストは武蔵小山駅近くにある雀荘、すい〜とぴ〜。伸ばし棒が「〜」になっているのも好きですが、イエローカラーの看板の「い」が「す」に寄り添っている構図もいいですね。アルファベットで書くならば「SWEET」になりそうな文字の響きです。そして「ぴ」の左肩になぜか穴が空いているのも見逃せません。なんとなく、この穴から「ぴ〜」という口笛が聞こえてきそうな、不思議な雰囲気を醸し出しています。

余談ですが、こういう昔ながらの看板に書かれている電話アイコンが大好きです。「03-」を省略してレトロな電話アイコンをあしらったデザイン。いい意味で昔っぽさが出ますよね。

最後に

いかがでしたでしょうか。今回は学大〜むさこ間のお散歩コースで見つけたものに絞ってご紹介しました。学芸大学にも武蔵小山にも、まだまだたくさんの魅力的なタイポがあるはず。また折を見て散策してみようかと思います。

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